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1)浄水器の現状 |
家庭用浄水器には行政基準はなく、メーカー業界団体の自主基準は1)遊離塩素がろ過できること、2)一般生菌数が100個/1リットル以下にできることの2つだけです。2)の生菌数は行政基準とまったく同じなので、実質は遊離塩素の除去だけになります。 塩素を取り除くだけということは、その場ですぐ飲まないと、細菌の繁殖を許すということを意味します。またトリハロメタンやトリクロロエチレンなどのろ過をセールスポイントにしている浄水器も最近はでてきていますが、ろ過の時点でフィルターに汚染物質がたまっていくため、カートリッジの交換を怠ると、ろ過以前より有害物質の濃度が高くなることもあります。 なにも付けずにそのまま飲んでいたほうがかえって安全ということは少なくありません。国民生活センターに寄せられている浄水器に関する品質クレームでもっとも多いのは、浄水器からの水のにおい、味がおかしいで雑菌の繁殖が原因となっている事例です。 下に簡単に各種浄水器のタイプと性能を説明しています。 |
2)据え置き型: カウンタートップ型ともいう。蛇口の先端と浄水器をホースでつなぎ、本体は流しの上に設置。蛇口直結型よりも処理容量が大きい。フィルターの交換頻度は年に一回程度。 3)アンダーシンク型: もっとも大型で、本体を流しの下に設置する。そのために工事が必要。 |
ヤシ殻や石炭などの原料を蒸し焼きにして作った多孔性の炭に、塩素やトリハロメタン、鉛などの重金属を吸着させて取り除く。非常にすぐれた有機化学物質の吸着材料で浄水媒体としてはもっともよく使用されている。 こまめにカートリッジを交換してやらないと、活性炭の微細な吸着穴が、埋まってくるため能力が低下する。そのまま使い続けると、いったん吸着した物質が遊離するなど、逆にトリハロメタンの濃度が高くなることがある。塩素除去能力が高い分、長い期間放置しておくと内部で雑菌が繁殖しやすい。 抗菌材として銀でコーティング(抗菌フィルター)したものもある。銀には殺菌作用があるが、しばらく使っていないと水に溶けだしてかえって人体に有害になることもある。赤さび・鉛、イオン類、硝酸性窒素、フッ化物などは除去できない。容量の大きく密なものほど持久力があり効果が長持ちする。 さらに詳しく知りたい方は、 カーボンフィルターとは何?できることとできないこと を読まれることをおすすめします。 2)マイクロフィルター(中空糸膜) 活性炭との組み合わせで使用される。ミクロン単位の穴が無数に空いた繊維フィルターに通水することで、細菌や高分子の不純物が漏れだすのを防ぐ。当然の事ながら、細菌を濾し取ったからといって、そのまま消えてなくなってしまうわけではない。細菌は、そのままカートリッジ内に残ることになる。浄水器というと、活性炭と、この中空糸膜を使った浄水器が一般的だが、雑菌の繁殖を防ぐために入れられる塩素が、活性炭で取られてしまうため、このタイプの浄水器では細菌の繁殖を食い止めることができない。また、中空糸膜は目詰まりをおこしやすく、その為、水量が減ったり、溜まった細菌が流れ出てくることもある。頻繁にフィルターを交換しないと、器内に汚れや雑菌が逆流してしまう。トリハロメタンなどは除去できない。 3)イオン交換樹脂膜 鉄や鉛などの重金属を取り除くには有効。塩素やトリハロメタンは、ほとんど除去されない。本来、水に溶け込んでいるミネラルを取るためのものなので、日本の軟水には向いていない。主にミネラルを除去するタイプなので、トリハロメタンやトリクロロエチレンなど有害物質をほとんど除去できない。活性炭で取れない硝酸性窒素などを取り除く選択式イオン交換樹脂もある。 4)セラミック 品質にばらつきが多く、具体的に何がどれくらい除去できるか特定できない。 5)逆浸透膜: 動植物の細胞膜(水の分子のみ透過させる)に近い人工の半透膜に圧力をかけ、その逆浸透作用によって真水を作る。逆浸透膜浄水器は活性炭を併用使用するので、塩素はもとより、トリハロメタン、細菌、重金属、TOX(有機塩素化合物)など、不純物すべてを除去する。尿やお茶までも真水にしてしまうほどその能力は高い。水分子(0.0003ミクロン)より少し大きい浸透膜孔により雑菌や不純物を除去する。ただし、その優れたフィルター性能からミネラル分までも除去する。また、浄水量に対して3−5倍程度の捨て水が必要となる。日本では、あまり普及しておらず手に入れにくい。 6)KDFレジン KDFレジンは主に塩素の除去に使われる限定された技術です。KDFレジンは高密度の無機物、金属、亜鉛、銅などで構成され90%以上の塩素を除去し、フィルター内のバクテリアの成長を阻止します。浄水のためには大量のKDFレジンと水との長い接触時間が必要です。従ってこのレジンはボイラーなどの大型の商業用途で最もよく使用されます。また塩素を取り除くのが主機能であるシャワーヘッドにも効果的に使用されています。 一般的にKDFフィルターは亜鉛と銅と使って電気分解を作りだしフィルター内のバクテリアの成長を抑えます。しかしながら、KDFを使用したシステムは水への亜鉛と銅の溶出の問題の可能性があります。KDFフィルターはさらに短期間で詰まりを起こしやすく、この詰まりはpHなどの特定の水の化学組成や温度などに依存します。メーカーはフィルターを温水で逆洗浄することを薦めていますが、この方法は大量の温水を必要とし、また浄化水へ汚染物質が再度入り込むのを防ぐことができません。 7)UVライト(紫外線) 紫外線ランプは光のこの部分の高エネルギーを利用して、バクテリア、ウイルス、その他の微生物のDNAとRNAを破壊して殺します。しかしながらこのシステムはクリプトスポリウムやジアルジアなどの原生(単細胞)動物に対しては効果はありません。紫外線ランプは通常雑菌などの繁殖しやすい活性炭と組み合わせて用いられます。 |
活性炭タイプ |
中空糸タイプ(マイクロフィルター) |
イオン交換膜タイプ |
セラミックタイプ |
逆浸透膜タイプ(メンブレンと活性炭を併用) |
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塩素・カルキ臭さ |
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かび臭さ |
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赤錆、鉛 |
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トリハロメタン |
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トリクロロエチレン |
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TOX |
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細菌 |
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ミネラル |
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有機化学物質の除去能力は高いが、能力は種類と設計により大きく異なる。塩素は有機物と反応しやすいため活性炭でたやすく有効に除去できる。赤錆、鉛はほとんど取れない。 |
効果があるのは細菌のみ。赤錆、鉛は水に溶け込んでイオン化したものは取れない。塩素も機種によってまちまち。 |
ミネラルの除去にのみ効果がある。赤錆、鉛は水に溶け込んでイオン化したものは取れる。それ以外は取れない。 |
塩素、赤錆、鉛、TOXは条件により効果があるが、その他はまったく期待できない。 |
アメリカの資料(政府・塩水研究所)によると、すべて除去する。 |
● ほぼ完璧に除去できる 〇 有効 △ 条件によって除去できる × 除去されない、不明
《参考》
家庭用浄水器に関する法的規制はありませんが、日本水道協会では、浄水器のろ過能力などについて審査し、基準に合格したものに対して形式承認を行い、「JWWA」マークを貼り付けています。 日本水道協会(JWWA)の型式承認 ただし、現在のところ審査の対象となる浄水器の形態は、『活性炭又は活性炭と他のろ材を組み合わせて用いたもの』と規定されており、除去対象物質は残留塩素または残留塩素と濁度です。 〔審査基準項目〕 - 性能及び品質 平成 8年 1月現在 |
浄水器協議会自主規格「特定物質に関する浄水器規格基準」とNational Sanitation Foundation International(国際衛生科学財団)の基準を比較してみました。数値は除去率です。 |
項目 |
浄水器協議会 |
NSF(国際衛生科学財団) |
塩素 |
80%以上 |
75%以上 |
濁度 |
80%以上 |
99%以上 |
TDS(総溶解量) |
なし |
75%以上 |
微粒子 |
なし |
0.5μ以上が |
トリハロメタン |
なし |
95%以上 |
クリプトスポリジウム |
なし |
99.95%以上 |
アスベスト |
なし |
99%以上 |
シマジン |
なし |
99%以上 |
トリクロロエチレン |
なし |
99%以上 |
トリクロロエタン |
なし |
95%以上 |
四塩化炭素 |
なし |
99%以上 |
テトラクロロエチレン |
なし |
99%以上 |
ベンゼン |
なし |
99%以上 |
ブロモホルム |
なし |
95%以上 |
その他の化学物質 |
なし |
65〜95%以上 |
浄水器協議会自主規格は、私達の求める本当のリスクの除去という点では
ほとんど意味をなしません。
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